整形美人じゃイヤ~ン

97年に公開された「暗黒タマタマ大追跡」のパンフレットで、ヘクソン役の筈見純氏が、しんちゃんが優等生でないから人気を博すというような発言をしています。

クレヨンしんちゃんは92年から94年にかけて大ヒットしてブームになった背景にも、まさに優等生をちゃかすというような姿勢があったのだと思います。特に、この頃(ビデオで言えば第1期、DVDは未発売なんですよね・・・)の話で特徴的なのは、風間君が非常にキザでイヤミったらしい性格であることがあげられます。なんか、「ドラえもん」のスネ夫に似ていなくもない。

その風間君をギャフンと言わせてしまうのがしんちゃんなんですよね。まあ、最初期に放映された「お絵かきするゾ」(1992年4月13日放送)で風間君の絵をしんちゃんが落書きして、風間君を泣かせてしまったのはやりすぎかと思いますが、このように優等生としての存在を「踏みにじる」というところに、人気を博した要因が見出せると思うわけですね。

以前も紹介したことのある、アニメ脚本家の雪室俊一氏がこういう事を書いていたりしますです。

かつて、クレしんの視聴率は20%を超えていましたが、今は10%強程度で、2002年から2003年頃では10%弱でした。現在、視聴率が低下している原因は言うまでもなく娯楽の多様化によるものが大きいですが、どうもテレビ番組、アニメ作品そのものが面白くなくなっているというのも原因と言えるかもしれません。

娯楽が多様化していると言っても、その多くの娯楽よりもアニメ視聴を子供たちが優先するような、面白い作品ができれば、まあクレしんの場合20%は無理でももう少し伸びるのではないかと思ったりします。実際に、第1期の頃のしんちゃんと、最近のしんちゃんを見比べると分かりますが、作風がずいぶん異なっています。

私も数年前に第1期のしんちゃんのビデオを一気に鑑賞した事がありましたが、ムチャクチャ面白いですもの。今のしんちゃんも面白いですが、初期の頃には到底かないません。とにかく、しんちゃんが非常識な行動をとりまくって、周囲をめちゃくちゃにしてしまう話が多いのですね。例えば、「結婚パーティーだゾ」(1993年放送6月28日放送)ではしんちゃんは結婚式会場でのテーブルの上を走り回って、料理などを台無しにしてしまうなど。

こういう破天荒な描写があったからこそ、しんちゃんは人気を博したといえるわけで。なんて言いますか、小説で言えばピカレスクものを読んでいるような感じでもあります。どうも、今のしんちゃんにはそういう悪漢的な描写が大きく減少していると思います。

確かに、今のしんちゃんなら「子供がマネする」といった抗議の類はそれほど多くないでしょうが、作品からもそういう抗議を「誘発」させないように気を遣っているように見えるのですね。先に紹介したページで雪室氏が最近のアニメの動向について以下のように書いています。


ストーリーは破綻なくまとまり、人物の動きに不自然なところはない。しかし、優等生の作文のようにハートがない。女性でいえば整形美人だ。子どもたちは整形美人より、鼻ぺしゃでも、おもしろいお姉さんのほうが好きなのだ。


最近のしんちゃんにハートが無いと言うつもりはありませんが、女性でいえば整形美人であるという感は否めません。昔は美人では無かったかも分かりませんが、面白おかしいお姉さんだったのは確かです。


雪室氏が脚本を手がける「サザエさん」ですが、一部のファンから「雪室サザエさん」のバッシングもあるらしいものの、同作品が常に高視聴率をキープしているのは、ネームバリューだけでなくなるべく整形美人に走らないようにという努力によるものなのかもしれません。

ところで、今の「サザエさん」ではタラちゃんはなかなかの良い子として描かれていますが、それに反発しようとする姿勢を持っているのも雪室氏のようです。その事の詳細はこちらのページをご覧ください。

ちなみに、(管理人を含め)一部の大きなお友達はしんちゃんの可愛さなどを強調すべき、もっとハァハァさせろと要求をしたりするかもしれませんが、まあメインであるお子様の視聴者を第一に考えるべきですな。

ただ、今のご時世、初期のような作風にすると視聴率が伸びてもスポンサーがつきにくくなってしまい、それで最終的に打ち切り、例えて言うなら自爆行為ににもなりかねないわけで、スポンサーとのバランスもまた考慮しなければならないという事情もあるのでしょうね。視聴率だけがすべてではないわけですが、もう少し悪漢度を高めてくれても、スポンサーは下りないんじゃないかと思ったりします。今のしんちゃんは、知名度などをとってもかなり強固なブランドとなっているようなので。

そういうわけで、今のアニメの視聴率が低迷する傾向には、優等生の内容ばかりが増えているからではないかと思えるのであります。子供が見たいのは非優等生の作品であるのにです。

あの独特のHairStyleで有名なアニメ監督が、最近のアニメのキャラクターについてこんなコメント(笑)を出しているらしいです(笑)。良い子は見てもいいけど、読んじゃダメよ(笑)

この記事へのコメント

たか
2010年01月18日 18:30
この件はわかりやすいのでコメントは短くまとめます。
TVだと難しいですし、ゲームでもほのめかしても画には出来ませんし、残るは映画版ということになるかと思いますがその辺はどうなのでしょうか。
チョルス
2010年01月19日 18:09
テレビはとにかく規制が厳しいですが、それは最も不特定多数に見られやすいメディアであるからだと思います。
ですから、劇場版に関して言えばもう少し破天荒な展開も許されるでしょう。せめて、劇場版ではテレビでなかなか見られない場面も入れてほしいと思ったりします。
やっくん
2010年10月01日 23:29
とても、面白い内容をどうもありがとうございます。
最近、ピカレスクって、いう言葉にはまっていて、
おバカなことをするお話なら、ピカレスクかって、
思って、ならクレヨンしんちゃんも入るんじゃないって思って、検索したら、ヒットしました。
 でも、クレヨンしんちゃんの場合は、いつも失敗しないのが、すごいし、希望が持てるところかもしれません(笑)。確かに、テレビの中のキャラには、大いに暴れて欲しいですね(笑)。整形美女じゃイヤ~ンという題名も最初は、わからなかったのですが、合点が行きました。
 なかなか、最近面白い記事を読むことが少なかったので、よかったです。どうもありがとうございます。
チョルス
2010年10月03日 05:50
ピカレスクという言葉は悪の主人公の作品に使われる言葉ですが、確かにクレしんもそれに当てはまると言えるかもしれません。なにしろ、「子供に見せたくない番組」の常連ですから。
ただ、子供はそういう番組を見たがっているわけでもあり、優等生のような整形美人を思わせる作品づくりをすべきではないと思うわけですね。
近年のアニメのしんちゃんは昔に比べるとずいぶんおとなしくなっていますが、ぜひとも初期の頃のような作風に回帰してほしいと思っています。
いやはや、お褒めのお言葉をかけていただき、ありがとうございます。私自身も面白おかしく書くことを意識してはいましたが、このようなコメントは予想外でした。

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  • 白米のうまみ

    Excerpt: 9月2日以来の『クレしん』のアニメ放送、そしてテレビアニメ感想も久々です。テレ●朝●が憎らしいと思ったりしますが、憎んでもしかたないので感想いきます。 Weblog: クレヨンしんちゃん分析録 racked: 2011-10-22 23:55